広報を経営に生かすために必要なことー「手段の目的化」からの脱却 


近年、広報・PR(Public Relations)に関する定義が様々に提案されるようになってきました。
主なものでは、日本広報学会が2023年に発表したものがあり、以下のように定義されています。

組織や個人が目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの
双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を維持・構築する
経営機能である。(日本広報学会 2023年)


また、日本におけるパブリック・リレーションズにおける権威、井之上パブリックリレーションズCEOである井之上喬氏がその著書「パブリックリレーションズ」の中で定義したものは以下の通りです。

パブリック・リレーションズとは、個人や組織体が最短距離で目標や目的を達成する「倫理観」に支えられた「双方向コミュニケーション」と「自己修正をベースとしたリレーションズ(関係構築)活動である。
(出典:井之上喬著 「パブリックリレーションズ」)



日本広報学会では明確に「経営機能である」と定義され、井之上氏は経営機能であるとは表現してはいないものの、「個人や組織体が最短距離で目標や目的を達成する」ための活動と定義されており、つまりは経営上の目的を達成するために実行される活動ということを意味するものと捉えられます。

1990年代ごろから、広報の機能は情報発信の機能から社会との関係構築の機能として徐々に進化をしており、それはすなわち、経営上で必要な機能であると、日本では2020年代に入ってからより明確に表現されるようになりつつあります。

例を挙げた上記2つの例から出てくるキーワードを抜き出すと、このような言葉が並びます。


一方で、一般的に広報・PR活動のイメージはこれらの言葉ではないでしょうか。


この2つ、比べてみると随分違うことがお分かりいただけるのではないかと思います。

下に掲示した一般的な広報・PRのキーワードの多くは、「広報の手段」であり、かつ短期的な活動や目標に過ぎません。
これらを実行することを目的に活動することはまさしく「手段の目的化」。
ここから脱却しなければ、広報・PR活動が成熟し、経営への貢献が実現することはありません。


また、広報・PRが認知獲得には向きにくい活動であることは以前の記事でもご紹介したとおりです。

「広報」と「広告」   知っておきたい役割の違い

広報・PRに関するお問い合わせで多いものの1つに 「広報」と「広告」どちらをするべきなのでしょうか? というものがあります。 近年、広報・PRを「タダでできる広告」と…


このような広報・PRの本質を表した定義と、一般的なイメージの乖離は様々な問題を引き起こします。

①経営への具体的な貢献を経営層が期待しているにもかかわらず、広報部門が手段の活動に終始してしまっている。
②広報部門は経営への貢献を目標としているにもかかわらず、経営層からは手段の実行ばかりを求められる。
③広報部門も経営層も手段にばかり気を取られ、長期的な目線で結局何が得られたのかが実感を持てない。

①②は評価にも関わる状況であり、広報現場のモチベーションにも影響します。
③になると、経営上での広報活動の必要性を誰も理解していない状況であることを意味しています。

このような手段の目的化はすなわち短期目線でもあり、「プレスリリースを出した」「メディアに掲載された」というような事象が達成されたとしても、結局それがどのような社会的な変化を生み出したのかという、長期で効いてくる本質的な成果と紐づけて考えることができていなければ、経営上の果実にはなっていかないのです。

これを解消するには、本質的な広報・PRに関する理解を、広報部門も経営層も双方に醸成することが必要であり、加えてどのような経営上の課題に広報として解決への挑戦をしていくのかという合意が必要です。

「広報は経営機能である」と言われるようになった昨今、広報と経営が一枚岩になるためには、双方に努力と歩み寄りが欠かせません。これを行わずにいると、先進的な企業がどんどん経営と広報の融合を進めていく中で、溝を開けられてしまう事態にもなりかねかせん。

まずは、経営層と広報部門との間で、活動を通じてどのような経営上の課題を解決していくのかについて対話を重ねていくことが第一歩です。
経営は広報活動に関する理解を、広報部門も本質的な広報活動への理解を深めると同時に、そもそも経営とは何なのか、経営が抱えている課題は何であるのかについて理解を深めることで、企業の広報機能が経営に資する機能としてその価値を発揮できるようになるのです。


鎌田陽子

〈この記事の著者〉
LEORIS合同会社 代表 鎌田陽子

ヤマハ発動機、ハースト婦人画報社等の広報・PR部門を10年以上経験したのち、2023年広報・PR支援を行うLEORIS合同会社を設立。
企業や団体・自治体等の広報・PR戦略立案から実行支援、担当者育成、危機管理広報の体制整備等に従事する。
早稲田大学大学院 経営管理研究科修了(MBA)
英国CMI Sustainability Practitioner

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