御社の広報活動を惑わせてしまうのは「コンビニスイーツ現象」かもしれない

弊社では、企業の経営者と広報の方を対象に、「広報とは何か?」というセミナーも行っています。

先日とある企業の取締役会で役員に向けて広報セミナーを実施する機会をいただきました。

同社は3年ほど前から広報活動を始めていたのですが、始めた経緯は「会社の知名度・認知が低いので、メディアに出て知名度を上げてほしい」と役員からのミッションを受けてのこと。
ただ、進めていく中で、現場にいる広報担当者はだんだん悩みを抱えるようになります。
創業100年を超えるBtoBの製造業である同社。先進的な業界でもなければ、季節性ともほぼ関係がない。見た目の面白さにも欠ける。メディアに出ると言っても、一体どうやって、そして何のために…?

そもそも広報は「認知を獲得」するには向かない活動です。
この点については過去の記事で詳しくお伝えしているので、こちらをご参照ください。

「広報」と「広告」  知っておきたい役割の違い

広報・PRに関するお問い合わせで多いものの1つに 「広報」と「広告」どちらをするべきなのでしょうか? というものがあります。 近年、広報・PRを「タダでできる広告」と…

広報って一体何だろう…?何のために行うのか…?手段はメディアだけなの?
だんだんと現場の広報担当者も悩みが深くなってきたそうです。
現場と経営が同じ職責に対して異なる認識を持っていたのでは、双方に幸せではありませんし、価値を生む活動に繋げるのは難しい。

「私たちも経営側も、もっと広報を正しく理解する必要がある。」
そんな想いで、取締役会での広報講義の機会を設定するという意思決定になりました。

広報活動をスタートさせる企業では、「認知獲得」→「売上げ増」などの短期的な結果という構造を期待しているケースが多くあります。
一方で、最近は広報の定義が明示されるようになり、代表的なものには以下のような例があります。

組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。
日本広報学会  広報概念の定義

パブリック・リレーションズとは、個人や組織体が最短距離で目標屋目的を達成する、『倫理観』に支えられた『双方向コミュニケーション』と『自己修正』をベースにしたリレーションズ(関係構築)活動である
井之上 喬著「パブリックリレーションズ」第3版 


いずれを見ても、「認知」や「知名度」「売上げ」などの言葉は含まれていません。

ではなぜ、人は広報を「認知獲得活動」であり、その効果を「売上増」と認識してしまうのでしょうか。
それは多くの人が、「メディアに出ているものを見て」「購入する」という体験を自らしていることが理由であると思います。

私は最近これを「コンビニスイーツ現象」と呼んでいます。

コンビニスイーツ現象とは何か

ゴールデンタイムのバラエティ番組や日中の情報番組の定番の情報の1つに、新作のコンビニスイーツがあります。
魅力的に紹介されるコンビニスイーツを見て、

「お、おいしそう!」
「明日買いに行こう!」

と思い、そして実際翌日買いに行った経験はないでしょうか。
多くの人が同じような行動を取り、メディアで紹介された翌日にはコンビニの棚からそのスイーツが無くなる。

こういった経験から、

メディアで紹介される → 認知獲得 → 売上増

という流れを体験し、
「広報活動をしてメディアに出ると、商品が売れるんだ!」という認識になるわけです。
たしかにこの構造は事実なのです。
でもそれは

「コンビニスイーツにおいて」の事実


であることを知っておく必要があります。

なぜ「コンビニスイーツ現象」は生まれるのか?

それは①アクセスの容易さと②意思決定の容易さに大きな要因があります。


①アクセスの容易さ

今やコンビニは全国津々浦々にあり、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の統計によると、その数は2025年12月時点でなんと56,054店。ぽつんと一軒家のような地域でない限りは、遠くても車で15分も走れば到達できる箇所がほとんどでしょう。
つまり、誰でもすぐに販売場所に辿り着くことができる。
どこか限られた場所でしか販売されていないものや、ネットでしか購入できないものであれば、アクセスや決済手段が限定的になったり、すぐに体験できない即時性で劣ってしまいます。
その点コンビニはすぐに現物に到達することができるという、アクセスの容易さが圧倒的なのです。


②意思決定の容易さ

最近は高級スイーツ店とのコラボレーション商品なども生まれ、話題のコンビニスイーツは以前よりは高価な傾向にあります。
それでもどんなに高くても500円前後に納まるものがほとんど。
500円のスイーツを購入することに対して、小学生でも親の許可が必要となるケースは稀ではないかと思います。

しかも、500円のスイーツを購入することに、「おいしくなかったらどうしよう」と思えて、購入を何時間も悩むようなこともまず起こり得ません。結果的に好みの味ではなかったとしても、それが後々までひきずるほどの人生の大きな後悔になるようなことでもないわけです。

つまり、購入することに対してのハードルが極めて低く、「意志決定」というほどのことでもなく、購入に至ることができるのです。

そして、コンビニの多くはすでにブランドが確立しています。
全く知らないブランドのお店ではない安心感があります。
この安心感も購入のハードルはさらに下げる重要な要素の1つとなるのです。

あなたの会社の事業で「コンビニスイーツ現象」は起こるでしょうか?

さて、ここで自社の事業に目を向けてみてください。

購入においてアクセスや意思決定の容易さはあるでしょうか?
BtoB企業の場合、ここはほぼ「NO」ではないでしょうか。

そしてBtoC企業であっても、コンビニスイーツと同等に2つの容易さを兼ね備えている商材はそれほど多くはないはずです。


メディアで紹介される → 認知獲得 → 売上増


この流れは確かに事実ではありますが、コンビニスイーツやそれと同等のアクセスや意思決定の容易さを持った商材において、であるとわかるのではないでしょうか。

また、メディアの側に立ってみると、メディア側は視聴率やPVが事業上必要なため、当然自メディアの視聴者や読者のより多くの人にとって「親和性があるもの」「興味があるもの」を取り上げるわけです。
ゴールデンタイムの番組や情報番組となればなおのこと。
だからこそ、この流れが構造的に成立しているのです。

自社の広報活動の目的を現場と経営で確認しよう

自社の事業で「コンビニスイーツ現象」は起こらない。
こう気づいたなら、改めて広報活動を行う目的と目標、そして手段を現場と経営で話し合うチャンスの到来です。

世の中を見渡すと、コンビニスイーツに限らず、広報活動の成功事例が溢れています。ただここで見誤ってはいけないのは、ほとんどのケースはその企業や背景の独自性や様々に絡む要因があってのこと。だから同様の「手段」を選択しても同じように成功するとは限らないということです。
事例は参考にはなりますが、大切なのはそこからどうやって自社に適用できる要素を抽出し、抽象度を高めて理解できるかです。
決して、どのような「手段」だったのかが全てではありません。

広報活動は目的を設定し、目標を定め、そのための手段を選択し、実行し、振り返りと反省をしながら、経営と現場がタッグを組んで進めていく活動です。
現場だけで独自で走ることも、経営サイドの思惑だけでミッションを投下することも、どちらも広報を行う上で最終的に得たい経営上の効果を遠ざけてしまいます。

数々ある経営上の課題の中で、どのような事柄に広報活動が貢献できるのか、まず広報の現場と経営で一度しっかりと目線合わせをしてみるのはどうでしょうか。
この一歩が、広報活動が経営の課題解決に貢献する大きな一歩となるはずです。



LEORISでは、「広報とは何か」を考えるきっかけを作る企業向けセミナーも行っています。企業の課題に合わせて、内容をアレンジしご提供していますので、お悩みをぜひお聞かせください。

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鎌田陽子

〈本記事の著者〉
LEORIS合同会社 代表 鎌田陽子

ヤマハ発動機、ハースト婦人画報社等の広報・PR部門を10年以上経験したのち、2023年広報・PR支援を行うLEORIS合同会社を設立。
上場大企業からスタートアップ、製造業からITまで多様なフェーズと規模での経験が強み。
企業や団体・自治体等の広報・PR戦略立案から実行支援、担当者育成、危機管理広報の体制整備等に従事する。
早稲田大学大学院 経営管理研究科修了(MBA)
英国CMI Sustainability Practitioner

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