広報・PR部門、担当者にはどんな力が必要なのか? ―コミュニケーション能力だけでOK?―

本記事は、「広報・PR担当者に必要な力」にクローズアップした内容です。
企業や団体が広報・PR活動を実行していくためには、社内担当者を任命することをお勧めしています。当社のような広報・PRの支援会社では、実務を代行することも可能ですが、新たにご支援する会社にはまず最初に
「まずは社内で担当者を設置するところから始めましょう。もし人員数に課題があれば、兼任も検討ください。今すぐが無理であれば、社内選考、もしくは採用に関してもお手伝いさせてください。」
とお伝えしています。
まず、自社内に広報・PR担当者を設置することの意義からお伝えしていきます。
自社内に広報・PR担当者を設置することをお勧めする理由
①熱量高さが活動を左右する
1つは、広報・PR活動でその企業や団体が大切にしているメッセージをより効果的に伝えていくためには「熱量」が必要だからです。この熱量は、社外の支援会社よりも社内でコミットしている人の方が圧倒的に高いのです。
広報・PR活動は長期にわたる活動なので、熱量が高くなければ続けること自体が難しくなります。
また、言葉を扱うことが多い仕事でもあることも関係しています。熱量は確実に言葉に乗ります。そういう観点で、自社内に担当者を設置することが大切だと考えています。
②広報・PRは取り組みによるナレッジも資産
もう1つは、支援会社が全てを代行していると、広報・PRに関するナレッジが社内に蓄積しないからです。広報・PRは結果だけではなく、取り組みに関連するナレッジも会社の資産です。
企業活動であるならば、それは投資なのかコストなのか、P/Lに反映されることなのかB/Sに反映されることなのか、常に考えることは当然のことです。これは広報・PR活動も例外ではありません。そして、広報・PRの活動で得られたナレッジも当然資産であり、数値で表すことが難しくとも、B/Sに乗ってくるものです。せっかく時間をかけて行う活動であるにもかかわらず、資産が残らないのは、経営としては課題だと考えます。
したがって、初期は支援会社のサポートを得ながら日常の実務を社内で実施できるように順次整えていき、その後は支援会社には専門的知見からのアドバイスや戦略策定・企画立案支援、イベントやキャンペーンの実行支援、社内では構築しにく外部とのコミュニケーション、そして今企業活動においてとても重要な「第三者の目線を確保」することに関して協力を仰ぐというのが、理想的な連携の形だと思っています。この形で進めていけば、社内の広報・PRの専門性も行動力も年々向上していくことが期待できます。
では、実際にどういう人を担当者に任命すればよいのでしょうか。
ここから、組織力の面と個人の能力の面の2方向から、指標をご紹介していきます。

「コミュニケーション能力が高い」だけで大丈夫?
広報・PR担当者の任命や採用時のジョブ・ディスクリプションで最もよく見るキーワードは「コミュニケーション能力の高い人」です。
たしかに、広報・PRの仕事のイメージは、メディアとのやり取りや社内での情報収集など、人と対話することで進んでいくものが多いかもしれません。でも、「コミュニケーション」は人との会話や対応だけに限られるものでもないですし、わかるようでわからない言葉ではないでしょうか。
このような「わかるようでわからない」状態を能力として設定し、人を任命するのはおすすめできません。キャリアに関わることですから、個人にとっても組織にとっても幸福であるために、真剣に向き合いたいところ。求める能力への解像度が低いと、一般的にコミュニケーション能力が高いとされる“イメージ”に合う「会話の上手な明るい雰囲気の人」を任命して、実際に求める機能を果たせないという事態も起こりかねません。特に社内から任命する時はこのようなことが起こりがちなので、熟考が必要です。
実はこれを書いている私自身も、企業内で広報部門の責任者をしていたころ、この解像度の低い状態で人員募集をかけていました。結果的に理想としていた人物には巡り合えず、採用活動が難航した苦い経験を持っています。
では、広報・PRに必要な力の解像度を上げて、考えていきましょう。
広報の組織力を測る「広報オクトパスモデル」
広報・PRの組織に求められる力を示している有名な指標として「広報オクトパスモデル」というものがあります。
電通グループでPR事業を手掛ける電通PRコンサルティング内の研究組織「企業広報戦略研究所」発表した指標で、企業・団体などの広報力の測定に活用されます。

「オクトパス」=タコのこと。すなわち8つの力で広報力を測定する指標です。8つの力の具体的な内容は以下のとおりです。
- 情報収集力:自社や業界・競合に対するメディアの評判や、ステークホルダーの動静などについて収集・把握する能力
- 情報分析力:収集した情報に基づき、自社の経営課題・広報課題を洞察する力とそれを組織的に共有する能力
- 戦略構築力:経営課題に対応する広報戦略の構築と、ステークホルダー別の目標管理・見直しを組織的に実行する能力
- 情報創造力:ステークホルダーの認知・理解・共感を得るために、メディア特性に合わせたメッセージやキービジュアルなどを開発する能力
- 情報発信力:マスメディアや自社メディア、ソーシャルメディアなどさまざまな情報発信手法を複合的にタイムリーに駆使する能力
- 関係構築力:重要なステークホルダーと、相互の理解・信頼関係を恒常的に高めるための活動と、実行する組織能力
- 危機管理力:自社を取り巻くリスクの予測と、その予防、さらには緊急事態への対応スキルを維持向上させるための組織能力
- 広報組織力:経営活動と広報活動を一体的に行うための意思決定の仕組み、体制 、システム整備などの水準
どうでしょう?「コミュニケーション能力」に近いものとして「関係構築力」が挙げられていたり、「情報収集力」などのようにコミュニケーション能力が結果を左右するような力も挙げられていますが、全体としてはコミュニケーション能力以外に求められるものの方がより多いことにお気づきいただけるかと思います。もちろん、コミュニケーション能力がベースにあればより円滑に力を発揮することができるものもありますが、コミュニケーション能力だけでは、広報・㏚の仕事が成立しにくいことがお分かりいただけるのではないかと思います。
ひとり広報の場合はどうすればいい?
この広報オクトパスモデルは、組織として兼ね備えたい8つの力なので、個人が1人で全ての力を持つことを期待するものではありません。スタートアップなどは一人広報のケースが多いので、全ての力を1人で賄うのは難しいいのが実際のところだと思います。そういった場合は、8つの中から自社にとって必要な力の優先順位をつけ、人選をする必要があります。足りないところは支援会社に力になってもらったり、順次組織を拡大して、複数人で8つの力を持つように進めていくのが理想的です。
また、組織として備えたい力とあるものの、今や広報・PRは、その中核を担う「広報部」のような専任組織だけで担う時代ではないため、その企業や団体等の全体でこの8つの力を向上させていく必要があることも、同時に認識しておきたいところです。
PRパーソンの人材評価モデル「SCALE PR Competency Model」
ここまで、組織として備えたい広報・PRの力から、広報・PR担当者に求められる力を紐解いてきましたが、個人として備えたい力についても提唱されている指標があるので、こちらもご紹介します。
PRストラテジストの本田哲也氏が代表を務められている本田事務所が開発したPRのコンピテンシーである「SCALE PR Competency Model」です。これは、広報・PRパーソンが備えたい5つのコンピテンシーについて定義されたPRパーソンの人材評価モデルです。「コンピテンシー」とは、何らかの専門領域における「行動特性」のことを指します。
「SCALE PR Competency Model」で示される5つのコンピテンシー
「SCALE PR Competency Model」は具体的に以下の5つのコンピテンシーで構成されています。
- マルチ憑依力:多様なステークホルダーのインサイト理解を切り替えることができる能力
- 背負い力:常にPR主体の「代弁者=スポークスパーソン」として判断し行動できる能力。
- 見立て力:社会の文脈や時流を把握し、PR主体への最適解を見いだすことができる能力。
- ナラティブ力:世の中に向けたダイナミックで魅力的なストーリーテリングを構想できる能力。「ナラティブ(narrative)」とは、「語りかた」「語り口」などと解釈される。
- 行動実行力:「状況が変わる」ことを前提としたシナリオ設計と実行ができる能力。
このSCALE PR Competency Modelは、「広報・PRのプロフェッショナル」としての能力が定義されているものです。したがって、非常に具体的であると同時に、かなり高度な能力が必要であることがわかります。
主体的であり、状況を把握し、解釈し、先を読んだうえで、組織をリードしていく力が強調されているように感じられないでしょうか。
広報・PRを仕事とする人は、決して与えられた情報を与えられたままに発信する人ではなく、組織やその課題・テーマを背負って立つ人のことなのです。とても重要なポジションであることを感じていただけるのではないかと思います。
まとめ
本記事では、組織的な側面から、そして個人としての能力の側面からと2つの側面から広報・PRパーソンに必要な力をご紹介してきました。
広報・PRは、一般的によく表現されている「コミュニケーション能力が高い」ことだけで成立する仕事ではなく、多様でかつプロフェッショナルな能力が求められる仕事です。
これから広報・PR部門の設置を考えていらっしゃる企業や組織、新たに担当者の選任や採用を考えていらっしゃる組織の方々は、自組織に今必要な広報・PRの力、それを全うすることができる担当者の力をより具体的に整理して採用や組織化を進めていかれることをお勧めします。
ダウンロード:広報・PRスキルチェックシート
この記事の中でご紹介した組織の広報・PR力、広報・PRパーソンの力をチェックするすスキルチェックシートをご用意しました。
こちらからダウンロードしてください。
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