2026年 広報活動で押さえておきたい社会の潮流とは?
2026年が始まり、今年の広報活動をどんな風に進めていこうかと考えている経営者や広報担当者の方も多いことと思います。
広報・PRの活動は、自社のことだけを考えていても、うまく進むことはありません。社会の流れを読んで、その潮流をどう乗りこなすのか考えていく必要があります。
広報戦略を立てる上でも年間の広報計画を立てる上でも、社会全体の流れはとても重要な要素になるので、ぜひ押さえておいていただきたい内容です。
年間計画の立て方はこちらの記事で詳しくご紹介しています。
広報も大きな潮流の中で自社を捉える時代
一般的に広報計画を立てる時、特に発信の計画には社会の細かな「出来事」(●●の日であったり、●●から何年、特定の領域に特化した法改正などの明確かつ特定の事柄)を調べていくことが必要です。ですが、そこで止まることなく、さらに大きな社会やグローバルな「潮流」も見ていくことがこれからの広報活動には大切な時代に入ってきています。
特に近年は、AIの台頭や急激な進化、円安による国内経済の混沌、世界的な半導体不足、米国の関税政策による調達コストの上昇や調達先のスイッチなど、業界特有の話題よりも、どの業界でも何かしらの影響を受けるような大きな流れが社会の話題の中心部を占めるようになりました。巨大なテック系プレーヤーがより大きなパイを獲得するため、特化型よりも汎用性の高いテクノロジーを開発し、それによって社会を席捲している時代なので、この流れは今後も変わらないと考えられます。
このような状況下では、主に業界やより身近な社会を捉えていくこともこれまでどおり必要ではあるものの、より大きなカテゴリーの流れを捉え、その中での自社の存在を俯瞰的に見ていくことができなければ、広い社会での自社の存在の必要性をステークホルダーとの間で合意形成していくことが難しくなっていきます。
また、業種問わず同じトピックに向き合うことを余儀なくされるこの時代には、より先鋭的に自社の存在意義を捉え、表現を熟慮し、事業活動にも発信にも反映させていく必要があります。このプロセスを欠くと、同じトピックに向き合う多くの企業と同じ情報、同じ方向性で進むこととなり、自社だからこそ提供できる価値はステークホルダーの中で薄れていくことになります。
この記事では、以下の4つの領域から2026年に広報・PR活動で意識しておきたい大きな“流れ”を挙げてみます。
・政府・官公庁の動き
・国際政治・国際情勢
・ビジネス界・経済
・社会全体のイベント
政府・官公庁の動き
この領域でまず押さえておきたい鉄板は「予算」「税」「行政の運用ルール変更」です。これらは業界を跨いで、事業推進やリスク対応の説明の土台を変えることになるので、しっかりチェックしておきたい動きです。
衆院選も終わり、今回の争点でもあった税や社会保障については議論が増えていくことが確実です。
社会、業界、自社にどのように関わってくるのかを注視しておきたいところです。
- 2026年度予算(過去最大規模・社会保障費の行方は?)
政府がFY2026の当初予算案を決定しており、政策のアクセルをどこに踏むか(成長投資か、物価対策か、社会保障か)が“社会の空気”になります。
企業・自治体・団体の発表は、これと矛盾する流れの説明をする場合にはしっかりとした根拠が必要です。
会見や発表の前提情報として常に押さえる価値が高い情報です。 - 2026年度税制改正(家計支援と企業施策の両方)
所得税の控除・基礎控除等の見直しなど、生活者の可処分所得に触れる論点が含まれます。
「賃上げ」「価格転嫁」「採用」「福利厚生」の説明をするとき、世論の基準点になるので、自社がこのテーマに対応する時に、必ずしっておきたい項目です。 - 消費税(特に軽減税率対象の扱い)をめぐる議論
食品・飲料の税率扱いなどが政治テーマ化している現在、値付け・販促・家計負担の語りは敏感になっています。
広報は“自社からの発信において、正しい説明”だけでなく“受け取り手の感情の導線”まで設計が必要になってくるトピックです。 - 生成AIの政府調達・利用ガイドライン(令和8年度から本格適用)
行政が生成AIをどう調達し、どう使うかのルールが整備され、令和8年度以降に適用されることが明記されています。
このような国家的な基準の策定は、官公庁案件に関わる企業だけでなく、民間でも事実上の参照点になりやすくなります。
自社におけるAIの扱いをどうするのか、ガイドラインを持っていない企業はこのタイミングで自社の方針策定に乗り出すことも検討しておきたいタイミングです。
デジタル庁 先進的AI利活用アドバイザリーボード - コーポレートガバナンス改革の“次の宿題”(資本コストと成長投資、グループ経営)
日本取引所グループの資料でも、ガバナンス・コードの改訂や「成長投資へ資源を振り向ける」流れが強調されています。今後、さらに子会社上場・親子上場、少数株主保護、独立社外の実効性が論点になる可能性があります。
企業において不祥事が発生した場合、速やかな信頼回復と確かな企業価値の再生に向けて、第三者委員会等による提言や、各社における検討を経て、再発防止策が慎重に策定されることが期待されています。
2025年も様々な企業による不祥事が明るみとなり、再発防止策にはさらに注目が集まるようになりました。これからの再発防止策は、予防措置に留まるのではなく、内部統制の抜本的な強化を目指して策定されているか否かによって、社会からの信頼回復のスタートラインに立てるかどうかを左右します。
このような背景から、日本取引所グループからは、内部統制強化・不祥事予防に向けたハンドブックも1月に発表されています。
日本取引所グループ 内部統制強化・不祥事予防に向けたハンドブック -体系化した再発防止策から学ぶ着眼点- (2026年1月)
国際政治・国際情勢
台湾有事やロシア・ウクライナの戦争、米中対立、日中摩擦など、国際的な政治・情勢は変わらず緊迫した状況にあります。主に軍事領域となる安全保障のほか、経済安全保障に関わるトピックについても注視しておく必要があります。
特に2026年は、「サプライチェーン」「人権・制裁」「エネルギー・物流」「サイバー」等の領域に注視しておきたいところです。
グローバルにまたがる大きなテーマなので、業界によっては一見関係がなさそうに感じるかもしれないのですが、例えば地政学リスクが高まると、特定の領域での調達が困難になるケースもあり、このような場合の対応策やそれに関するオフィシャルな回答案を持っておくことも広報としてのレベルアップにつながります。
- 地政学リスクの高止まり(物流・エネルギー・投資等への波及)
大国間の緊張が高まると、納期遅延や価格上昇が起きたときに「御社は何を想定していたの?」という質問がメディアを中心としたステークホルダーより聞かれるケースが出てきます。
リスクの“存在”より“備え”(代替調達、在庫、BCP、顧客影響)を説明できるかが広報の勝負どころです。 - 対中の輸出管理・重要鉱物(レアアース等)をめぐる摩擦
重要鉱物やデュアルユース規制は、製造業だけでなくIT・通信・自動車・医療機器まで波及します。ESG対応の観点からも重要なポイントとなるので、関係部署と連携し、「調達の透明性」「代替の確保」「顧客への影響」を言語化しておく必要があります。
特に上場企業の場合は、自社のESG対応の項目について状況を把握して主担当部門と連携を取っておきましょう。 - サイバー脅威と情報戦
特に大型イベントは攻撃側にとって“目立つ舞台”となりやすい傾向があります。自社が直接関係しなくても、なりすまし広告・偽キャンペーン・偽アカウントが増えやすいタイミングです。
広報としては「公式発表の出し方」「偽情報の否定テンプレ」「被害時の一次コメント」を備えておくことも実務的に必要になってきます。
ビジネス界・経済
日本経済は物価高、円安、住宅の高騰、一方での株高など、話題に事欠かない状況です。この状況においては企業業績ももちろんですが、その先にある「家計」「投資」などのキーワードも重要になってきます。
自社がど真ん中ではなくても、取引先・採用市場・株主/金融機関が反応するということを念頭に置いておく必要があります。
- 物価・賃上げ・価格転嫁の継続(生活者の目線が基準化)
税制や家計支援の議論が起こっているこの時期はセットで、価格改定や賃上げの“納得の設計”が問われるタイミングなので、春闘の動きなども注視しておきたいところです。
価格改定や賃上げにまつわる発表を行う場合には、「理由」「影響」「緩和策」「タイミング」をしっかりと練って発信する必要がいつも以上に高まります。
社会的な感情を見極める広報の力が問われる領域です。 - 生成AIのガバナンス(法規制だけでなく“運用”が評価対象に)
政治行政の観点でも触れたこの領域は、ガイドラインが社会的に整ってくるほど、企業は「使ってます/使ってません」の範疇ではなく、「どう管理しているのか(人の関与、検証、著作権、個人情報、誤情報対策)」が問われるようになってきます。
新しい領域の話はどうしても他社や業界がどのように対応しているのかを様子見をしてしまいがちですが、率先して自社のガイドラインを策定していくことで、積極的な姿勢を示すことにもつながります。 - サステナビリティ開示の“実務化”(EU起点の要求が取引を通じて波及)
特に欧州におけるサステナビリティの開示は厳しい条件で知られていますが、2025年に開示の方法等につき一部簡素化が行われました。
緩和されたとはいえ、自社は欧州には拠点はないから関係ないというわけにはいかず、直接適用されない企業にも取引先要求として情報提供が求められる可能性はあります。上場・非上場や企業規模は関係ありません。
「人権デューデリジェンス」「サプライチェーン」「移行計画」は、広報が“表現のみ”を調整してもこのような欧州からの情報提供依頼においては通用はせず、企業としてのサステナビリティへの対応が不可欠であり、データに基づいた情報提供が求められています。 - DE&Iの行方
米国では連邦控訴裁が“DE&I禁止を狙う大統領令”への包括的な差し止めを認めない判断が報じられ、運用次第で個別に争う構図が強まっています。「属性ベースの優遇に見える設計」「数値目標の言い方」「参加条件」などは注視しておく必要があります。
一方で欧州は逆方向に“制度ドリブン”で進みます。EUのサステナ開示(CSRD)は、企業が直面する社会・環境リスクや人への影響も含めて報告する枠組みで、開示の要求水準が高いのが特徴です。
米国の動きによってある種の揺り戻し期に立っているこのトピックは、企業のスタンスが如実に現れる領域です。「なんとなく良い感じの表現」ではなく、改めてこのトピックに対する自社のスタンス、そのスタンスと実態の齟齬の有無を広報視点でチェックしていくことの必要性がますます増しています。
社会全体のイベント
スポーツイベントや政治・経済に関わる大型イベントが、2026年も数々予定されています。
政治や経済に関わる会議型のイベントは、ある種のルールメイキングの場でもあるため、動向を注視しておく必要があります。
近年は国際的な協調姿勢が薄れている状況にあり、その影響もあってサミットの意義に疑問が呈されている状況のため、大きなルールの合意に至らないケースが多くなっています。
そのような状況下であっても、「どういうポイントで合意に至っていないのか」を見ていくことで争点を知ることができ、各国の選択によって自社やステークホルダーが受ける影響を複数想定することができるようになります。
- Milano Cortina 2026
開催時期は広告・キャンペーンが過密になり、権利侵害、ステマ疑義、炎上(表現・差別・政治的含意)も増えます。さらに警備・サイバーなどが注目されるため、スポンサー/関連企業は危機管理広報の準備が必須の状況です。 - FIFA World Cup 2026
サッカーのワールドカップは開催期間が長く、SNSで“世界標準の言葉狩り”が起きやすい傾向があります。国内向け発信でも海外に拾われる前提で、表現のチェック体制(多言語、画像、引用、権利関係)が必要になります。 - G7サミット 2026
AI、気候、サプライチェーン、安全保障などが議題になりやすく、社会課題の論調が動きます。企業の「立ち位置」が問われやすいタイミングなので、発信テーマの棚卸し(自社が語るべき領域/黙るべき領域)を事前に決めておくと急な状況に対する - COP31
気候変動に代表されるような環境課題については、進捗・根拠・データが問われるようになってきました。
COP前後は検証記事や比較が出やすい時期です。サステナビリティに関する情報発信に注力する企業は、発信をする場合は根拠がセットで求められます。発信を行わない場合でも、サステナビリティに関する主担当の部門と、今後の自社に必要な対応を共有しておくことで攻めと守りを兼ね備えた広報活動に近づきます。
ここまで様々なトピックをご紹介しました。中には自社の事業には関係がなさそうだなと感じられる項目もあったと思います。
ただ、広報活動で大事なことは、「社会的な文脈をどう翻訳するのか」「その中で自社の在り方を社会に向けてどう翻訳するのか」という心構えです。
どんな企業でも、多種多様なステークホルダーが存在していて、そのステークホルダーのたった1人でもここに挙がったトピックの影響を受ける人はいるはずなのです。そのような視点で物事を見ると、自社に関係がなさそうとあっさり見過ごしてしまうのは、時にもったいことでもあり、時に備え不足によるリスクにもなり得ます。
大きなトピックに関心を寄せることは、単に時流を知ることだけではなく、広報活動のチャンスの創出でもあり、また、備えることでのリスクの軽減にもつながります。攻めと守りの両方を担う広報にとって、とても大切な情報であることをぜひ知っていただき、自社の対応を進めてみてください。

〈本記事の著者〉
LEORIS合同会社 代表 鎌田陽子
ヤマハ発動機、ハースト婦人画報社等の広報・PR部門を10年以上経験したのち、2023年広報・PR支援を行うLEORIS合同会社を設立。
上場大企業からスタートアップ、製造業からITまで多様なフェーズと規模での経験が強み。
企業や団体・自治体等の広報・PR戦略立案から実行支援、担当者育成、危機管理広報の体制整備等に従事する。
早稲田大学大学院 経営管理研究科修了(MBA)
英国CMI Sustainability Practitioner
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